波長の合う関係
こんなに慎重なのは今までもなかったことなので、おそらくこの時点で既に私は彼に好意を抱いていたのでしょう。この人とじっくり真面目に付き合ってみたいと、この出会いを大切にしなくてはならないと本能で悟った感じでした。
翌週、彼と仕事帰りに外苑前の鶏料理屋さんで初デートすることになりました。私は通常通りに仕事を終えて、それでも待ち合わせまではたっぷりと時間がありましたが、彼はこの日は仕事を早く切り上げてきてくれました。
会話はそれほど困りませんでした。私の方は今まで数々の合コンを経験してきているし初対面の人とも適当に盛り上がる会話くらいは意識しなくてもできるのでした。私のちょっとした陽気さと、大人しめで若干人見知りのような気配も感じられる彼とはなんとなくバランスがとれているような気がしました。少なくとも私にとってはその日はとても穏やかで楽しいデートになりました。同業者だからお互いの会社の話もしようと思えばどこまででもできるし、お互いちょっと愚痴っぽくなったりして笑いあったりと、当たり障りないことが幸せに感じられた時間でした。
その日は金曜日でした。私は別れ際に次の約束を軽く口約束でもできたらいいなと思っていました。いつ切り出そうかと思っていた矢先、彼の方から「明後日の日曜日って予定あるかな、よかったら映画にでもいきませんか。」と言ってもらえたのです。彼の気持ちが少なくともその時点でかなり私に傾いていることが瞬時に理解できたので、私は二つ返事で明るくOKと答えました。ついでに私も週末誘おうと思っていたなんてことまで口をついて出てしまいました。
そしてそれ以来、毎週末食事デートを重ねて、半月後に交際し始めて、その1年後、彼の方からプロポーズしてもらいました。現在の夫がその彼です。
彼は、私を焦らせることもなく心配させることもないくらいの絶妙なタイミングでプロポーズしてくれました。きっと彼と私はそういう点で波長が合っていたのだと思います。私もいつもせっかちで派手だと言われましたが、彼と交際し始めたらそんなことを言われなくなりましたし、きっと彼に出会うまでの私はどこか無理をした自分をさらけ出していてなかなかいい人に巡り合えなかったのでしょう。
当時のことを思い返してたまに2人で話すのですが、彼は当時のあの合コンは本当にギリギリまで欠席しようと思っていたそうです。それがどういうわけか参加することになって私に出会ったということです。そういう話を聞くにつけ、一期一会は本当に大切にしなくはならないなという気持ちになります。